中山寺と固焼き煎餅
大きな山門をくぐると露天商が店を出している。
その内の一つに忍者焼、固焼き煎餅が在る。もう五十数年焼き続けてきたおっちゃんが「噛んだらアカンよ、歯が欠けるから」と売っている。
熱しられた鉄板に乗せてから焼き上がる迄に35分、そして一斗缶に入れられて10日間完全に冷熟成させられた物が商品として並ぶ。まかり間違っても「焼き立て」等と注文してはイケナイ。とにかく固い。まず金鎚か何かでないと割れはしない。
で、おっちゃんが割り方を教えてくれる。両掌に一枚づつ持ち拍手を打つのだ。そうすると程良い大きさに割れ口の中に納まる。と、言って直ぐに噛んではイケナイ。
まだ歯がカケル。それほど固い。
しばらく飴玉を舐める様にして口の中で溶かすと甘味がジワッ〜と出て来る。ここまで待って噛み始めるのである。
これが何とも美味しい。少々高いかも知れぬが手間ひま掛けて焼き上げた逸品である。是非味わって貰いたいものだ。
ここはお寺ではあるが、宮内庁に腹帯を納めるお寺としても有名であり、他の三十三ヶ寺と違って参拝者の平均年齢は思いッ切り若い。妊婦やお宮参り(?)お礼参りと成ればベビーカーやらでの参拝と成る為、階段の付近にはエスカレーターやエレベーターが設置してある。
観音巡礼の民がポツリポツリのお寺とは勢いが違い過ぎる。
株式会社・中山寺の感が否めないのだがイヤらしさが微塵も無い。儲けの為にでは無く、「参拝者の為」にと割り切られた考えの元、寺が存在価値を上げ続けて来たのであろう。
近代、バブルに乗じて各地に「テーマパーク」成る物がお目見えした。
景気は何時迄も良いわけでも無く、ブームもコンビニエンス化された生活の中では「使い捨て」に過ぎはしない。生活も頭の構造も「ファースト・フード」且つ、「ジャンク」な並びで動いているのであろう。一部のそれを除けば、ことごとく「テーマ・パーク」はお荷物となった。
もちろん、構想や現実がお粗末な事も事実ではあるのだが。
しかし、ここ中山寺はその「いにしえ」より仏教のテーマパークと呼んでも過言ではない、生まれ年による守り本尊を祀る院が参道に並び、それぞれの役目で観音様をお守りしておられる。
各寺院が一斉におつとめを始めればおそらく巨大な力が働きその界隈のオーラは不思議な世界を産み出すのであろう。
総ては、観音様の深い懐の元、累々と流れてきた時間の一部を垣間見ているのかも知れぬ。

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