丹乃國蕎麦〜拓朗亭〜


■拓朗亭
〒621-0805
京都府亀岡市安町小屋場77-3
※亀岡宮脇書店様斜め向かいです。
TEL:0771-24-4334
MAIL:
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新蕎麦熟考

毎年9月に入ると「新ソバはいつ頃からか?」と聞かれます。中には真夏に来店されてお食べに成られ「新ソバの頃を楽しみに来ます」等と声を掛けて下さるお客様もおられるのですが、内心『?』と思っております。「えっ?」と聞き返しますと「いやぁ、夏場でこれだけの味と香りが出ているのなら『新ソバ』の時期はどんなだろうと思って」と言われるのですが正直、余り変らない。と、言うよりもむしろ「夏季」の方が美味しいと思います。
 ひと口に「新ソバ」と言っても産地により播種期が違うのですから収穫期も違います。当然、北海道の平野部「幌加内」等が収穫は一番早いのではないでしょうか。9月の上旬には「新そば」として出荷され製粉屋や一部のそば屋が買い付けます。ここから、国内玄ソバ栽培地最北端の音威子府(オトイネップ)や北海道の各地が徐々に収穫に入ります。
 拓朗亭では北海道産と言えども10月に入ってから収穫される昔ながらの「秋新」の刈り入れをひたすら待ちます。これがきっちり乾燥されて拓朗亭に送られて来るのは早くとも10月の下旬です。そして信州・黒姫、茨城、栃木、福井、石川、徳島、宮崎。時として鳥取等も季節を追って続々と入荷してきます。これらの産地は皆、昔から伝わるその地方の栽培方法と収穫期を持ち、収入を早く得る為に播種期を早くし収穫期を本来の時期からずらすと言う事は一切しないのです。当然、自然の恵みで栽培される穀物ですから、あと少しでようやく「刈り入れ」と言う時期に台風が来たり、早霜に遭って壊滅。などは悲しいかな茶飯事です。それでも、それに執着するのは、ピタッと決まった時には本当に美味しい「蕎麦」を造る事ができる事実を過去に経験してきたからに他なら無いのです。
 
 こうして収穫され拓朗亭に入荷された「玄ソバ」(黒いカラの付いたソバの実)はホコリや土を磨いて落とし、小石を抜き、7〜9段階の大きさごとに分けられます。これらのカラを剥き石臼で製粉するのです。
 
 少しは、理解して頂けたと思われます。では、「新そばはいつ頃からか?」と言う問いかけに正確に応えようとしたら、何処の産地の「新ソバか?」がわからないと応えようが無い事も御理解下さい。刈り入れが始まる頃にようやくタネマキ等と言う3ヶ月近くのズレが生じる穀物なのですから…。


では、ここで拓朗亭からの質問です。


 毎年、9月頃からマスコミ諸誌がこぞって出版する、「新そばの美味しいお店」って『新そば』以外の季節に行ったらマズイの?新そばの時期だけが美味しいの?


 現、拓朗亭は器にも建物にもこだわりを持ちません。それはこの場所における拓朗亭の蕎麦屋としての考えとして、『蕎麦は庶民の食べ物。肩肘張らずに食べる物』との思いが強いからです。料亭の一種としての「蕎麦屋」なら器に凝るもよし、建物に身代を注ぎ込むのも良いと思います。しかし、『たかが蕎麦、しょせんは蕎麦』だと思うのです。ただ、「より美味しい物を、より安く」は我々の努めだと思いますが「より美味しい物は安く造れない」のは避けようの無い現実なのです。では、拓朗亭は何にこだわって来たのか?実は「こだわり」と言う安直な言葉は余り好きではありません。取材に来られるマスコミ諸氏にも「こだわり」と言う言葉は出来る限り拓朗亭の紹介文に於いては使わないでもらうようお願いをしています。それは唯一無二何時行っても、どの季節に行っても、ウマイ蕎麦を喰わせる店拓朗亭と呼ばれる事に執念を燃やして来たからです。
 この、一点にだけこだわり続けて来たのです。一年を通じて味を落とさない、形を変えても自然であり、火を通しても新鮮な蕎麦を造り上げる為に小さな努力を少しずつ積み上げて来たのです。

 昨今は9月頃から至る所の「そば屋」で『新そば』等と言うポスターが貼られてあるのを見かけます。いわゆる「こだわりの店」として名を馳せた所でさえも、この時期に『新そば』と言われる…。何にこだわっておられるのだろう?と思ってしまいます。おまけに「どうです、新そばだから美味しいでしょう」と聞いてこられる。もう、ヘソで茶、いえいえ『蕎麦湯』が沸きそうです。御自分で「ウチの店では、新そば以外は『おいしくないよ』」と言われているわけでしょう。ここまで来たら傑作ですよ。それを又、御大層に有り難がって食べておられる…。

 ソバは五穀にも入れて貰えぬ雑穀ですが、穀物ですから当然「油分」も少しは含んでいます。これが抜けて蒼臭みも少し取れた師走の終わりから、年明け2月頃までなら何の管理もせずに放ったらかしのソバでもそれなりに美味しいと思いますヨ。要はこの状態でこの味や香りが1年中(翌年の2月頃まで)保てればそれで良い訳なのです。「こだわってる」と言われる割にはそれが出来ていないから、9月になると「新ソバ、新ソバ」って言わざるを得ない。本当にこだわってるなら「ウチは美味しく無い新ソバは仕入れないし、使わない」って言うでしょう?結局は自然相手の作物を無理して造らしてるだけの様な気がするのですが…。需要があるから供給せざるを得ない。
 もとっも、9月の中頃に出荷される北海道産の『新ソバ』と呼ばれる『ソバ』は8月の終り頃から刈り取りが始まる分けでしょう。これを『新ソバ』と呼んで良い物かどうか?拓朗亭は甚だ疑問に感じますネェ。遅蒔きの『夏ソバ』と言った方が適切な気がして仕方がないなぁ。いえ、独り言ですけれどネ…。
 
 きちんと管理が出来て一年中、味を劣化させずに提供出来るならば、ちゃんとした昔ながらの『秋新』に固執すべきだと思います。それも出来れば手刈りの天日干し…。きちんと造られた玄ソバは管理さえ間違えなければ2年位は味も香りも色度も劣化しない物なんです。
だから、余り「新そば、新蕎麦」って云わない方が良いかとおもいますよ。以前、○○で食べた「新蕎麦」実はウチにも多分、同じのが入荷されて来ていたのだと思うのですが、物凄く『重油臭い』のですよ。「?」って思いながら作業を進めて少しだけ打ってみたのですがゆがいても匂いが残るどころか、釜湯にまでうつるんですよ。慌てて電話して引き取ってもらいましたが、原因は「乾燥機に使う重油が不完全燃焼していて匂いが付いた」って云うのですが、それはそれとして、それを「新蕎麦だから」と平気で食べさす店はどうかと思うし、回収しようとも考えない業者には呆れて縁を切らせて頂きました。

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